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アフリカで産業開発支援することの意味

アフリカで産業開発支援することの意味

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途上国の産業開発・工業化を支援するというのは、日本のODAの一つの柱です。私も今まであちこちで産業開発に向けた調査を担当してきました。といっても私はエンジニアではないので、もっぱら中小企業振興とか、貿易・投資振興するのはどうすれば良いかといったテーマの調査を担当していました。対象とした国は、ほとんどがアジア諸国であり、東南アジア、南アジア、中央アジア、中東の国々でした。今まで、アフリカでこうしたテーマの調査をしたことはなかったのですが、今回アフリカの某国で産業開発に関する調査に加わる機会がありました。比較的短期の調査だったのです。アフリカで日本が産業開発支援することの意味について、いろいろ考えました。それを纏めます。

 アフリカには低所得国が多く、内戦など紛争が続いている国も少なくないです。そのため、多くのドナー諸国は食糧支援といった人道・緊急支援的なものか、教育や保健医療分野の社会開発を狙った支援を実施しています。アフリカ諸国が2015年までのミレニアム開発目標の達成を目指している、という国際的な背景もあります。日本も例外でなく、アフリカでは人道・緊急支援か、教育/保健医療分野の支援が多いです。これ以外にも、東アフリカの稲作が盛んな国では、農業支援にも日本は長年取り組んでいます。しかし、日本をはじめとしたドナー諸国が、アフリカで産業開発・工業化の支援に取り組んでいるという事例はほとんどないと思います。日本が「カイゼン」という生産性向上等につながる指導を、企業向けに実施しているケースが、数か国であるくらいでしょうか。

アフリカで産業開発支援が活発でない理由の一つは、おそらく対象となる企業があまりに貧弱だからと思われます。アジア諸国では産業開発の支援対象となる企業の層が比較的厚いです。工業化の基盤が多少は存在し、ODAでの技術指導や資金支援の実施相手となるような中小企業が多いです。ドナーが技術面、資金面の支援を行えば、それを受けて成長できるような企業がいくつもあります。ところが、ところがアフリカ諸国では、支援の対象となるような企業、特に中小企業、が本当に少ないです。アフリカにも外資系の大企業(コカコーラ等)はあるのですが、そもそもODAの支援など求められていません。インフォーマル部門と言われる家族経営の零細企業は膨大な数があります。しかし、あまりにも零細すぎて、ドナーの支援を受けて成長できるようなレベルではありません。大企業と零細企業との中間にある、中小企業がとても少ないのです。だから、産業開発を目的とした支援を展開しようにも、相手がいないのです。

第二の理由は、特に日本の場合ですが、日系企業の少なさと思われます。アジア諸国であれば、産業開発支援を行う場合、現地に進出している日系企業の存在をどうしても意識します。現地の中小企業に技術指導して、日本企業に部品を納められるまでに育てるといった視点で支援プログラムを作ります。人材育成にしても、日本企業が進出しているセクターで、技術者や技能者を育てることが良く見られます。日本企業があまり強くない分野、日本企業の進出がめったにないセクター(例えば医薬品産業)での、日本のODAが産業開発支援を行うケースなど見たことがありません。かつては、日本のODAを日本企業の利益に反映させるなど良くないといった意見があり、こうした産業開発支援は目立たないように実施していました。しかし、今ではむしろこうした連携が奨励されています。実は、近年は日本だけでなくEU諸国の援助も、こうした官民連携の傾向が強くなっています。

日本がアフリカで産業開発支援を考えた場合、日本のODAが連携できるような日系企業が現地にほとんどいないことに気づきます。特に製造業分野での進出がとても少ないです。中小企業に技術指導しても、産業人材を育成しても、日系企業のために役に立つことが見込めません。もちろん「だからアフリカでは国益など意識せずに、純粋に国際協力の視点で、産業開発支援に取り組めば良いだろう」という考え方もあるかと思います。実際、そのような意識でアフリカ企業の「カイゼン」指導に取り組んでいる日本人専門家の皆さんも多いでしょう。しかし、アジア諸国での産業開発支援と比べると、アフリカではどうしても援助を受ける側のモーチベーションが低いような気がします。たとえば、タイの中小企業なら、「トヨタに部品を納めたいから」といった強い願いがあるため、日本のODAの「カイゼン」指導に懸命に食いついてきます。日本人の指導期間が終了しても、自力で継続しているケースが少なくありません。一方、アフリカだとこうした背景がないので、ただ知識として「カイゼン」を習得しておしまいになってしまいがちです。短期間で目立った成果が現れなければ、すぐに忘れられてしまいそうです。

援助する側も、現地の日系企業のニーズに応えるためといったプレッシャーがないので、何となく緊張感が無い支援になってしまっている印象があります。アジアだったら日系企業に寄与するセクターに集中的に支援を行います(例えば鋳物産業等)。しかし、アフリカだと、中小企業の層の薄さもあって、いろんなセクターから雑多な企業を選んで支援することになります。これも、何となく焦点の定まらない、いかにも「援助っぽい」支援になってしまっているように見えます。

アフリカで、人道・緊急支援や教育/保健医療分野以外に、日本が産業開発分野の支援を展開したい理由もわかります。産業開発、工業化しなければ、いくら人造りしたって失業者が町に増えるだけで、持続的な発展につながらない、という見方でしょう。しかし、ODAの産業開発支援は、やはりドナー国のビジネスと直結するのが効果的だと思います。アフリカでもEU諸国は、自国のスーパーマーケットに供給するための、野菜や花卉の栽培支援、流通網整備といったプログラムをアフリカで実施しています。アフリカで日本企業があまりに存在感が無い現状では、日本のODAは産業開発分野に取り組まなくても良いのではないのでしょうか。

 

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