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ODAとNGO

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ODAとNGOの違い?

ODAとはOfficial Development Assistanceの略で日本語では政府開発援助と表記されます。政府が国民から徴収した税金などを使って、途上国相手に実施する援助です。一方、NGOは御承知のようにNon-Government Organizationの略であり、われわれの業界では途上国で援助事業を実施する民間の非営利団体を指します。もっとも最近は非営利団体だけでなく営利目的の企業も途上国の開発に大きな役割を占めるようになってきたため、NGA(Non-Government Actor)と表記する場合も増えてきています。大手の国際NGOとしてはWorld Vision、Plan International、Save the Children、国境なき医師団(MSF)などが有名で、日本でも活発に資金集めをしています。こうした大手NGOの事業費は欧州の小国の政府開発援助額に匹敵すると言われています。途上国の開発や貧困削減を目的とするという点では、ODAもNGOも同じです。活動地域も分野もかぶっているケースが少なくありません。では、ODAとNGOとは何が異なっているのでしょうか。それぞれの役割分担はどうなっているのでしょうか。

ODAの特徴

まずODAの特徴は相手国でのパートナーが政府機関ということです。中央省庁、地方自治体、政府機関など政府系組織をパートナーにすることが多く、住民に直接に物資やサービスを提供することはあまりありません。技術協力事業の場合、まず相手国政府の職員に研修などを実施し、業務能力の向上を促します。そして、こうした職員を通じて、現地の住民(例えば、農民、患者、学生、企業家など)にサービスを提供するというステップになっています。なぜこうしたアプローチをとるかというと、サービス提供の持続性を重視しているからです。ODAによる支援はいつか終了するものです。住民に直接にサービスを提供すると、ODA事業が終了した際に、サービス提供もストップしてしまいます。政府職員がODAで能力を向上させることができれば、ODA事業が終了しても、永続的にサービスが提供されることになります。また、全国各地の多くの政府職員の能力を向上させることができれば、広範囲の住民に便益が及ぶことも期待されます。(ただこのロジックが常に通用するわけでないことは別稿で述べたとおりです)。また、資金規模が大きいので、港湾、高速道路、発電所といった大規模のインフラ事業や、数多くの施設(学校、病院など)の建設も可能となります。

このように持続性と範囲や規模の面で長じたODAですが、欠点は準備に時間がかかるという点です。日本のODA事業の場合、まず相手国政府から大使館へと外交チャンネルを通じて要請されます。この相手国要請が日本政府(外務省など)で検討され、実施が決まると、国際協力機構などの実施機関に決定が伝えられ、実施に向けた準備がスタートします。その後、コンサルタント等の業者の選定を行い、当該国での事業が開始されることになります。このプロセスは煩雑なものであり、実際に要請されてから事業が開始するまで、2年間くらいかかってしまうことも珍しくありません。もちろん大地震や津波などがおきて、ODAの緊急支援隊が速やかに現地に派遣されることはありますが、こうした事例は例外的です。当該国での事業実施が決まって、要請から二年後に相手国に赴いたら、現地のニーズ自体が変わってしまっていたなんてことも、ままあります。

NGOの特徴

一方、NGOの場合、機動力は高いです。煩雑な意思決定プロセスなどないので、現地にニーズが発生すれば、すぐに現場に駆けつけることが出来ます。また、相手国政府を介せずに直接に受益者に物資やサービスを提供するのもNGOの特徴です。特に保健医療、教育といった分野では、NGOが自ら病院や学校を建設し、医師、看護師、教員などを雇用します。そして、地域住民に医療や教育を直接に提供します。医薬品や教材の確保もNGO側が行います。さらに、スラム街の不法住民(スクワッター)など、行政の対象となりにくい住民に対しても、サービスを提供することが出来ます。これもNGOの特徴です。受益者に直接にサービスを提供するので、住民の喜ぶ姿を目のあたりにすることができ、とてもやりがいがあります。そして、こうした活動の姿を先進国で広報することで、さらなる寄付を集めることができます。

しかしながら、NGOの事業がかかえる構造的問題は持続性にあります。何かの支援事業を実施すると現地でとても感謝されるのですが、いったい何年間これを続ければ良いのだろうという悩みです。貧困はたやすく解決する問題ではありません。NGOとして5年間くらいは事業を続けることはできるでしょうが、5年後に終了してしまって良いのでしょうか。それとも10年、20年、30年と支援し続ける必要があるのでしょうか。撤退のタイミングはどう判断すれば良いのでしょうか。中東のヨルダンには、40年以上前に造られたパレスチナ難民キャンプがあります。中東戦争の被害を逃れてイスラエルから逃げてきたパレスチナ難民が収容されています。しかし、40年以上もたつ「キャンプ」っていったい何なのでしょう。ここはNGOではなく国連によって運営されているところですが、支援事業を撤収するタイミングのむずかしさを物語っているように見えます。

NGOの問題の第二はインパクトだと思います。大手の国際NGOにはそれなりの資金力がありますが、それでも当該国政府の予算額とはくらべものになりません。全国に数百万、数千万人の人口がある国や地域で、NGOの建てた病院や学校でサービスを受けられるのはせいぜい数百人でしょう。膨大な量の貧困層を前に、砂漠に水を撒いているような徒労感に見舞われるのではないでしょうか。

ODAとNGOとの補完

ODAとNGOにはそれぞれ強みと弱みがあります。これらを補完するような協力関係を築くことができれば理想的と思います。例えば、災害など緊急性を擁する支援はNGOに先行して実施してもらい、その後の時間のかかる復興支援はODAが取り組むといったものです。あるいは、国全体の広範囲な教育の整備は国が進め、NGOは行政がカバーしにくいスラム街の住民やストリートチルドレンなどを相手に支援するといった関係です。私は東日本大震災の直後に、某NGOの支援活動に参加して、東北三県を回ったことがあります。地震の影響で交通網が分断されていたにも関わらず、主なNGOは災害発生して24時間後には現地で支援活動を展開していました。その機動力には目を見張るものがありました。また、私がお世話になったNGOは、避難所に来ない在宅の高齢者をターゲットとして支援事業を進めていました。行政は、体育館などの避難所に集まった膨大な被災者だけの対応で精いっぱいで、とても各地に点々とする在宅高齢者までは手に負えない状況でした。在宅といっても、電気、ガス、水道などライフランが全部断たれており、近隣の店舗も全部閉鎖され、満足に生活できる状況ではありません。高齢者には持病を抱える人が少なくなく、まわりに迷惑をかけるからという理由で、避難所での集団生活をあきらめていました。こうした在宅高齢者のように、行政の網の目に漏れた住民を対象とするもNGOの重要な役割だと実感しました。

NGOがODAを代替?

最近、NGOと政府、ODAとの関係について、気になることがあります。それは政府が十分に機能できていない脆弱国においてよく見られます。それは、NGOが政府を補完するのではなく、代替してしまっているという状況です。例えば、ある地域をNGOが政府から受け持ち、そこの住民の教育サービスをNGOが行政に代わって提供する状況です。地域住民にとっては、あてにならない行政よりも、NGOが質の良いサービスを効率的に提供してくれるのであれば満足でしょう。でも、こうした代替は良いことなのでしょうか。そもそも当該NGOの支援はいつまで続くか確証がありません。仮に、当該NGOの活動方針が変わって当該地域から撤退するようなことになったら、これまでのサービスはどうなるのでしょうか。また、こうしたNGOは、時として政府の現職職員を高給で引き抜いて、自らのスタッフに加えてしまいます。行政知識も経験も豊富な者をスタッフとして活用できれば、支援事業の実施には極めて好都合です。しかし、優秀でやる気のある政府職員がどんどんNGOに転職してしまうのは、やはりよくないことのように思えます。そもそも脆弱な行政機関が、こうした引き抜きによって、ますます脆弱になってしまいそうです。さきほど、ODAのアプローチは、まず相手国の政府職員の能力を、研修事業などを通じて向上させることと書きましたが、ODAによる研修に参加した政府職員が、1年もたたずにさっさとNGOに転職してしまったりします。

私はODAの側で働いていますが、ODAが優っているともNGOが優れているとも考えたことはありません。両者には強みと弱みがあり、それぞれを補完してゆければ良いと思います。しかし、脆弱国でのNGOの在り方を見ていると、ODAとNGOとの関係をスマートに築くのは容易なことではないと常々思います。

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