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マイクロファイナンスとは(前編)

マイクロファイナンスとは(前編)

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マイクロファイナンスとは、これまで銀行など既存の金融機関に相手にされていなかったような貧困層に対して、無担保で少額を貸し付けたり、貯蓄、送金、保険などの金融サービスを提供することです。こうしたサービスが、1980年代に初めて登場したときは、少額貸付から始まりました。そのため、はじめはマイクロクレジットと呼ばれていました。その後、貯蓄などの貸付以外のサービスも提供するようになり、マイクロファイナスと呼び名が変わるようになりました。マイクロファイナンスの意味や仕組み、これまでの変遷などについて、二回にわけて説明します。

貧困層の金融ニーズ

金融ニーズなどと書くと都市部の富裕層を対象としたテーマのように聞こえますが、農村部の貧困層にも明らかに金融ニーズはあります。むしろ、貧困であるからこそ、利便性の高い金融的なサービスを強く必要としています。

貧困層にとって必要な金融サービスの第一は、貸し付です。これは、貧困層の中で事業を起こす意欲のある人々を対象に少額の資金を貸し付けすることです。貸付額の水準はもちろん国や地域によりことなりますが、日本円で、だいたい数千円くらいから、最高でも数十万円程度までです。貧困層の中には、事業を起こし経済的に自立できる潜在性があるにもかかわらず、資金不足からそれが難しい人々がいます。少額の貸付をおこなうことで、こうした人々が収入創出活動に従事し、所得を増加させ、生活環境を改善することが目的とされています。

第二は貯蓄サービスです。自然災害など予測不可能な事態にそなえ、安全で利便性が高い貯蓄サービスを提供するものです。一般に、貧困層は自然災害など予測不可能な事態に直面した時の対応能力が低く、一気に窮乏生活に陥ってしまう危険性があります。こうした外的ショックに備えるためには、経済的に余裕がある際に貯蓄を行い、安全で利便性が高い場所に保管する必要があります。

第三は送金サービスです。外国や都市部からの送金を、安全に、かつ大きな手数料を負担することなく、受け取るサービスです。途上国の貧困層には外国や都市部に出稼ぎに入っている親族を持つものが多いです。外国から、あるいは都市部から故郷の親族に送金をするのですが、国際的なサービスを利用すると、多額の送金手数料を徴収されるケースが多いです。これを避けようと、故郷に帰る知人に現金を託すようなケースもありますが、当然、危険が伴います。貧困層に使いやすい送金サービスの普及が求められています。

以下では、貧困層に対する主な金融サービスの中で、特に貸付と貯蓄に焦点を当てて、概要を説明します。

貸付サービス

1980年代になり、バングラデシュやボリビアといった途上国で、貧困層に対する少額の貸付(マイクロクレジット)が開始されました。それ以前は、貧困層への貸付は、高利貸などを除けば、極めて限られたものでしかありませんでした。銀行などの公的な金融機関が貧困層を相手に貸し付け事業を行うことはありませんでした。マイクロファイナス事業者が少額貸付を行うことで、貧困層は生活水準の引き上げを狙うことができます。たとえば、農民であれば、栽培作物を多様化して新たな現金収入を得ることができます。さらに、収穫された農産物を加工して付加価値を高めることも可能です。露天商であれば品揃えを充実させることで顧客を増やすことができます。また手工芸者であれば、原材料を大量購入することで調達経費を低く抑えることが可能になります。マイクロファイナス事業者の貧困層への少額貸付とはどのような仕組で進められているのでしょうか。

銀行が貸付しない理由

マイクロファイナンス事業者の活動について説明する前に、まず、なぜ銀行は貧困層への貸し付けに消極的なのか、その理由を整理してみます。まず、銀行側が指摘するのは貧困層が担保を持っていないことです。貧困層の多くは、自分名義の土地がなく、家屋は貧祖で、他に資産などありません。貸付金を回収できなくなる可能性があるのに、何の担保も設定することができません。貸し倒れリスクが大きすぎます。第二に、貧困層への貸付は手間がかかることです。例えば、100万円を1人に貸し付けるのと、1万円を100人に貸し付けるのでは、手間がずいぶんと違うのは容易にわかると思います。貸付による収益に差が無いのであれば、大口の顧客を優先させ、貧困層への貸付業務などには取り組まなくても不思議ではありません。それに、貧困層には文字や数字が読めない人が多いです。金利や返済について書面で確認することもできなければ、契約書にサインをしてもらうこともできません。また、農村部には銀行の支店などはありませんから、特に農村部の貧困層にとっては、少額の資金の借り入れや、その返済のために、わざわざ交通費を負担して都市部の支店にゆくのでは意味がありません。こうした理由で、銀行貸付は貧困層にとって縁がないサービスなのです。

高利貸が貸付できる理由

もっとも貧困層相手の貸付を積極的に行うビジネスがあります。いわゆる高利貸業者です。もちろん、貧困層への貸付のリスクが高いことは、高利貸業者にとっても同じです。担保が提示できず、手間のかかる貧困層相手にどうやって貸付を行っているのでしょうか。その理由は高利貸業者と貧困層との関係が近く、また貸付以外の商取引でも貧困層とつながっているからです。高利貸業者は不特定多数の貧困層を相手にするわけではありません。通常、一人の高利貸業者が限られた地域の貧困層を相手にします。一人の業者が相手にする顧客の数はせいぜい数十人程度でしょう。その地域にどういう人が住んでいるか把握し、リスクが高い貧困層は避けて貸付を行います。また、高利貸業者は専業であるとは限らず、むしろ農作物の仲買人などが兼業で行っているケースが多いです。もしも返済ができなくなったら、その年の収穫物を引き取ることで返済にあてることができます。だから担保は不要です。それに、ある地域に仲買人として通い続けて入れば、どの世帯の貸付リスクが高いかはしだいにわかってくるものです。

もっとも、中には悪質な高利貸もいます。窮乏状態にある世帯に対して、最初からとても返済ができないような高い金利で貸し付け、返済できなくなった貧困層から、農地、家屋などを取り上げるような業者です。

なぜマイクロファイナス事業者が貸付できるか

それでは、なぜマイクロファイナス事業者は貧困層を相手に少額の貸付を行うことができるのでしょうか。マイクロファイナンス事業者は、小規模なところで数万人、大手だと数百万人の顧客に貸し付けしています。一人のスタッフが担当する顧客の数も百人をこえます。一人ひとりのリスクを把握することなど不可能ですし、相手は担保も用意できない貧困層です。文字や数字を読めない人々も多いです。なのにマイクロファイナンス事業の返済率は98%まで達するところが少なくありません。貸付にはどのような秘訣があるのでしょうか。

その第一は、借入人を5人ほどあつめて返済に共同で責任を負わせることです。これは必ずしも「連帯責任」ということではないです。たとえば、最初に5名中の2名だけが借り入れを認められます。この2名が滞りなく返済を続けてゆくと、他のメンバーも借入する権利が与えられます。この仕組みだと、他のグループメンバーの「目」があるので、返済を滞らせることができません。またそもそもリスクの高い世帯は、このメンバーに入れてもらうことができないでしょうから、貧困層自身によってスクリーニングが行われることになります。

第二は、毎週の集会にグループメンバーを集めて貸付や返済を行うことです。貧困層は貸付を得る際も、返済を行う際も、マイクロファイナンス事業者のオフィスにはゆきません。むしろ事業者のスタッフが、貧困層の住む地域にやってきます。週に一回30人ほどのメンバーを集めて、まとめて業務を行います。5人でグループをつくっているから、30人ならば6組ということになります。各世帯を個別訪問するより、よっぽど効率的です。一人のスタッフが週に五日間、毎日30人のグループを訪問すれば、合計で150人を相手に業務を行うことができます。午前と午後で別のグループを訪問することもあるので、この数はさらに増やせます。

第三は、貸付の前に貯蓄から始めることです。貸付を実施するまえの準備段階として、各メンバーに毎週少額の貯蓄をはじめてもらいます。通常は数十円~百円程度のわずかな金額です。これを毎週続けられるかどうかが、そのメンバーの信頼度を表します。信頼に足ると判断されたメンバーは、まず数千円程度の少額の貸付を行います。そして、この返済が無事終われば、数万円程度を借り入れるチャンスも与えられるといった具合です。

こうした手法は農村部の貧困層を相手に貸し付ける場合に主に使われます。都市部においては多少ルールが異なります。借入人グループを作らなかったり、携帯情報端末を利用して業務の効率化を進めるといった事業者があります。

このような少額貸付の手法は、1980年代にバングラデシュのマイクロファイナス事業者などが開発して、何年にもわたり改良してきました。今では世界各地の途上国で適用されています。このような手法に忠実にしたがえば、農村部の貧困層への少額貸付はむしろ安全で安定的なビジネスになっています。

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