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世界にはなぜ豊かな国と貧しい国があるのだろう?(前編) 

世界にはなぜ豊かな国と貧しい国があるのだろう?(前編) 

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二年ほどまえに埼玉県で小学生相手に開発の話をしたことがあります。「子ども大学」という企画で、小学生を大学生と見立てて実際の大学で授業をしたものです。相手が10歳前後の子供だったので、話が難しくならないように苦労しました。その時の講義をテープおこししてもらいましたので、一部をご紹介します。

(以下、講義録)

 私は、年間の半分くらいは海外へ行っています。これまでに40カ国近く外国で働いてきました。よくみなさんからは「かっこいいですね」とか「国際人ですね」と言われますが、発展途上国のアジアやアフリカを回っているので、それはそれは大変なんです。病気や虫刺されを心配をします。現地でトイレに入ると蚊が100匹くらいも騒いでいるとか、そんな生活なんです。とは言っても、日本で普通に生活していたら見られないこととか、出来ないことを経験(けいけん)する幸せがあります。

砂漠で一晩すごしました

20年前からこの仕事をしていますが、もっとも多く出かけた国はベトナムです。たぶん50~60回は行っているでしょう。それから中東の砂漠の国、アジアとアフリカの間に砂漠(さばく)がいっぱい広がっている地域、そこのヨルダンという国に2年とちょっと住んでいたことがあります。そこでイスラム社会のことや、砂漠はどういうところかを知りました。とても良い経験になりました。

私は砂漠で一晩明かしたことがあるんです。そのときは現地の観光ツアーで行ったのですけれども、砂漠のど真ん中でキャンプを張って一晩過ごしました。砂漠というのは、むちゃくちゃ熱いんです。たぶん50℃以上の気温です。フライパンの上を歩いているような感じで、もう熱くて熱くて仕方がありません。喉(のど)も乾くし、何でこんなところへ来てしまったのかと思いながら歩きました。

夜の8時か9時くらいになると、ちょっと熱さはマシになります。夜中の12時くらいには気持ちいいなぁ、という感じになるのです。砂漠のど真ん中だから真っ暗なんですよ。すごく静かで何の音もしない。テントの中は暑くてて寝られないから、砂漠の砂の中をずっとウォーキングしていたんです。そうしたら天の川が光っていました。

天の川、英語でmilky wayと言いますが、本当にミルクの道みたいなのが頭の上にありました。星がとってもきれいで、ずっと見とれていました。すると1~2時間して星がだんだん見えなくなってきたんです。急に星が無くなるわけがないと不思議に思っていたら、地平線からサーチライトみたいなのが現れてきました。車にしてはライトが1個しかないし、オートバイなのかなと思ったけれど、音もしない。それにしても迷惑なやつだな、せっかく星を見ているのにと思っていたら、その眩(まぶ)しいのは月だとわかってきました。月ってこんなにも眩しいのかと思いました。月がだんだん昇っていったら星が見えなくなっちゃった。こんな経験は初めてでした。

その頃はもう涼しくて気持ちが良かったのですけれども、それからちょっと寝て、朝7時くらいに起きたら、いきなりフライパンになっていました。砂漠で生活するのは本当に大変です。

倒れた牛に群がる鳥

最近は、アフリカのエチオピアによく行っています。来月もまた出かけるのですけれども。この前、すごい景色を見ました。エチオピアの地方に、同僚(どうりょう)と車で6時間もかけて出かけたのですが、途中の道路で30頭ほどの牛を連れて歩いている人たちがいたのです。たぶん餌(えさ)のある場所へ移動していたのだと思うのですが、牛が一頭倒れちゃったのです。牛飼いの人は「大丈夫か」みたいな感じで声をかけていました。私たちは「あのままじゃ死んじゃうだろうな」と思いつつ通り過ぎました。

そして、現地での仕事を終えて7時間くらい経って、同じ道を引き返したのです。すると体長が2m近くの鷲(わし)だか鷹(たか)だか、カラスのデカイみたいなヤツが10羽くらい、倒れた牛に群がって、くちばしで突っついているのです。牛は半分白骨になっていました。鳥がこんなに牛を食っちゃうのかと驚きました。犬やハイエナも来ていましたが、鳥が怖いから10mくらい離れて食べ終わるのを待っているのです。すごい光景でした。私も、もし砂漠で行き倒れたら、きっと半日も経たないうちに、こうなってしまうのだなぁと、自然の凄(すご)さを知りました。

私たちのような仕事をしている人間は、いろいろ大変な思いもしますけれども、普通に日本で暮らしていたら、見られないようなものも見る機会があるので、そういう点では恵まれていると思います。また、世界中に行って、いろいろな仕事をしたり、たくさんの人と話をしたり友だちになったりします。

なぜ貧しい人々がいるか

私は、昔から疑問に思っていたことがありました。こういう国の人たちは何でこんなに貧乏(びんぼう)なんだろうと。でも金持ちはむちゃくちゃに金持ちなのです。タイのバンコクは豊かな町ですが、そんなところでも貧乏人は物乞い(ものごい)をしています。赤ちゃんを連れたお母さんがお金をせびっています。

今、私が行っているエチオピアも大変貧乏な人たちがたくさんいます。どうしてそうなっちゃうのだろう? 現地の人たちの月収が3,000円とか4,000円くらいが多いのです。1日ではないのですよ。1カ月にです。多い人でも7,000円か8,000円。何でだろう? 自分の給料と比べて何でこんなに違うのだろう? 私より頭が悪いから安い給料しか支払ってもらえないのかなぁ? とんでもない。現地の皆さんの中には、私よりよほど頭が良かったり、優秀な人が少なくないのです。

何で日本と貧しい国との間にこんな差が出てくるのだろうか? 生活習慣の違いから、収入に半分くらいの差はあるのかもしれないけれども、10倍、20倍の差はないだろうと思っていたので、そういったことを考えてみたいと、このテーマを選びました。でも難しいことかもしれません。

貧しい国とはどういう国?

さて、①貧しい国とはどういう国なのか? ②貧しい国ってどこにあるのか? ③なぜ貧しいのだろうか? ④人はいつ貧しいと感じるのか? ⑤貧困はどうやって無くすか? の順にお話を進めていきたいと思います。

まず、私たちの生活と貧しい国とはどう違っているかを、簡単にグラフにまとめてみました。貧しい国は私たちの国と比べて所得が少ない。所得というのは収入ですね。1カ月に使えるお金がずいぶん少ないのです。

 所得グラフ

グラフの一番上が高所得です。日本とかアメリカ、ヨーロッパなどが入っているグループです。次が中所得。そして低所得と世界を分けていますが、こんなに差があるんですね。豊かな国と貧しい国との間には10倍くらいの大きな差がありますね。だから私たちが貧しい国へ行くと何でも安い。食べ物も生活も安い。でも貧しい国の人が日本に来ると、店へ行っても買うものがないのです。高過ぎちゃうからです。お菓子を1個買う値段で、向こうでは夕食が食べられるほどなのです。

学校に行けない子どもが多い

そして、貧しい国の子どもは学校へ行けないことが多いのです。このグラフの高所得の豊かな国では98%で、ほとんど全員が学校へ行っています。中所得の国でも91%ですが、低所得の貧乏な国は65%の子どもたちしか学校へ行っていない。

 就学率グラフ

しかも、その中には途中でやめてしまう子どもも入っているのです。卒業まで通学できない子どもがほとんどで、小学校1年生、2年生くらいになると、もう字が書けるだろうし、数も数えられるだろうし、計算もできるだろうからと、家に戻されちゃう子どもが多いのです。だから大人は字が読めません。高収入の国や中収入の国だったら、ほとんどの人は字が読めるのですけれどね。

15歳以上でどれくらい字が読めるかという比率ですけれども、貧しい国は65%くらいしか字が読めない。つまり逆の36%、100人に36人は字が読めないんですね。もちろん数字もよく分からない。そういう人たちと一緒に生活していると、こちらの説明が分からなかったりして、とても大変なんです。

豊かな国の人たちは長生きします。日本人は寿命が長い。大体が80歳くらいまで生きるでしょう。でも貧しい国では50歳、60歳くらいで亡くなってしまう。それにアフリカにはエイズという病気があって、これにかかって35歳くらいで死んでしまう人が多いのです。新聞を見ると「誰々が死にました。葬式はいつです」という死亡広告ばかり。本当に早く死んでしまいます。

子どもの死亡率も高い。赤ちゃんもなかなか助からないのです。適切なお医者さんのところでお産できることが非常に少ないのです。だから出産のときや、赤ちゃんのときに死んでしまうのです。貧しい国は出産のときの死亡率がとても高いのです。

そして、苦しい出産をするときに、専門の助産婦さんやお医者さんがいないと、お母さんも死んでしまうことが、貧しい国や途上国ではよくあるのです。本当に貧しい国で生活するのは大変なことなのです。

貧しい人は世界に何人いるか

次に、貧しい国って一体どこにあるのかということです。世界で貧しい国、貧しい人たちについて、これも数字で見ていただきたいと思います。

まずクイズです。世界で住んでいる人を100人とすると、アメリカや、ヨーロッパ、日本など豊かな国に住んでいる人たちって、何人くらいだと思いますか? ①45人くらい ②16人くらい ③3人くらい。

答えは、②の16人くらいです。世界を100としたら16人くらいが私たちのいう豊かな国に住んでいるということになります。世界の16%くらいが高所得者。収入が高くて、ほとんどの子どもが学校に行っている。赤ちゃんもすくすく育って、お母さんも十分なケアをされている。日本は豊かな国なんですよ。

ところで、世界の国っていくつあるか知っていますか? 実は国の数をはっきりと「いくつ」とは言えないんです。国としてまだ多くの人々に認められていなかったりするからですが、おおよそ200弱くらいの国が世界にあります。

その中で、特に貧しい人たちがいます。1日1日を生きるのが大変だという人が13%。100人のうち13人くらいはとっても貧しい、誰かが助けてあげないと、明日の命も危ないという人たちがいます。世界の人口が65億人ですから8億人くらいの人、日本の8倍くらいの人口が、明日の命も危ないので、何とかしてあげなければいけない。

ここでまたクイズです。特に貧しく本当に困っている人というのは、1日いくらくらいで生活しているでしょうか? ①200円くらいで非常に厳しい。 ②300円ぐらいしか使えるお金がないから大変だ。 ③100円しかない。さあ、何番でしょうか? 答えは③です100円です。約1ドルですね。1日1ドルしか使えない人たちのことを貧しい人といって、私たちは特別に考えています。

世界で13%、8億人くらいの人たちが毎日それくらいのお金しか使えないのです。100円で何が買える? これで朝から夜までの食べ物や生活用品を買わなくてはならないのです。どれだけ大変な生活でしょう。

所得分布世界地図

1日100円のお金も使えるかどうかという厳しい国の人たちは、この世界地図の赤色のところに多く住んでいます。どこがどの国か分かる? 日本はどこにあるか分かるかな? 普通みなさんが見る地図では、日本は真ん中にあるけれども、この地図では日本は右の方にあります。右の白い島が日本です。真ん中にある赤い三角形みたいなのがインド。もう一つ赤いのがアフリカ。その特に真ん中あたりが、すごく貧しい人たちが多いのです。

なぜ貧しくなったのか

次に、今日の本題である、なぜ貧しいのか? ということです。一体どうしてそうなっちゃったのでしょう。私たちもインドの人たちもアフリカの人たちも能力は変わりないのに、こういう国は、なぜこんなに厳しい状況になっちゃったのでしょうか。地理とか経済、社会、政治、歴史、そういった点からも、理由をいろいろ考えてみました。

国が厳しい場所にある

まず、明らかに言えるのは、非常に厳しい場所に国があるんですね。厳しいところに国があると、豊かになりにくいのです。たとえばラオスという山国があります。ベトナムの隣にある山に囲まれているような国です。こういうところだと人が動くのも大変で、物を作るにも働くにも厳しいのです。

ラオスという国は、ベトナムとタイの真ん中にある山の国なんですが、2年くらい前に良くいきました。日本の本州と同じくらいの面積なのですけれども、海がないのです。周りは全部山で囲まれています。

そういう国は、国内を移動するのが大変なんです。全て道路を行くしかないし、山の中を通るわけだから、すごく時間がかかるんです。首都の街ビエンチャンから南のパクセーという大きな街まで動くのに、車で12時間もかかるんです。良い道があるところでもそれくらいはかかる。ものを運んだり売ったり買ったりするのに、とっても大変なんですね。こういう国でビジネスをするのは厳しい。だからなかなか豊かになれないのです。

日本がこんなに豊かになれたのはなぜでしょうか。ラオスと国土が同じくらいで山もいっぱいありますよね。でも日本が幸運だったのは島国だったからです。島国は海から物を運んだりすることができます。船に乗れば人も動かせるし、物も動かせる。車が無かった時代、山の中を物を担(かつ)いで運んだのに比べれば、海は早く安く大量に運ぶことができる。どこにその国が位置しているかということが、大きな理由になっていると思います。

それから自然災害も国を貧しくする原因となります。国によっては干ばつ、津波、洪水といった災害を受けるところにあります。それも大変です。水がない、雨が降らない、こういう状況がよくある国は、豊かになれないですよね。本当にかわいそうです。洪水や津波の被害に毎年見舞われるようだったら、やっぱり国が豊かになることは難しいですね。

政治が悪い

それから、政治も国を豊かにしたり、あるいは貧乏にしたりします。国が豊かになるために大切なことの一つは、政治が安定しているということです。極端(きょくたん)な例ですけれども、戦争をしている国は、絶対豊かになれない。戦争を何度もすると、国が荒れてしまいます。ビルも工場も学校も壊されちゃいます。あっという間にひどい状況になってしまいます。戦争を続けている国が豊かになれるはずがないです。戦争をすると国はたちまち貧乏になります。

政治が腐敗していることも、国を貧しくします。国を貧乏にさせるのに手っ取り早いのは、変な人がリーダーになっちゃうことです。変な人が王様や首相になるとその国の政治がおかしくなります。そういう国は世の中に少なくないです。

たとえば、東ヨーロッパにルーマニアという国があります。ヨーロッパの中でも特に貧しい国なんですけれども、この国の大統領はずっと長いこと国を支配していました。貧乏の人たちからお金をとって、りっぱな宮殿を造っちゃいました。こんなことをすると国民が豊かになれるはずがないですよね。

そして、政府が仕事をするときに、政府職員が賄賂(わいろ)といって余計(よけい)なお金をもらってしまう国があります。政府職員は賄賂を自分のポケットに入れちゃうとか、それを外国の銀行へ預けちゃうとか、裏で隠れて悪いことをやっている。政府がこういうずるいことをする国は貧乏になります。私たちが貧乏な国へ行って仕事をするときにも、お金を要求されることがあります。お金を出さないと仕事が動かないなんてこともあります。

お札をどんどん印刷すると?

それから、もう一つは経済政策の誤りです。ちょっと難しいかな。人々は生活のために国の方向を定めるような仕事をしているのです。たとえば、私がある国の大統領だったとします。私はみなさんの人気をとりたいために、スポーツ施設や空港も道も造る。どんどんいろいろなものを造るんですよ。でも私の国の政府は、そんなにお金を持っていないから、銀行に命令して、どんどんお金を印刷するのです。けちけち言わないで、どんどんお金を刷りなさいと言って、いっぱい作っちゃうんです。

お金ばかりがいっぱいになると、物の値段が高くなってしまいます。今日150円だった物が、明日は1,500円になっている。明後日になったら15,000円になっている。そんなことになってしまうのです。私のような馬鹿な大統領が、どうせ紙なんだから、お金をどんどん刷れと言っていると、ついには、ちょっとした買い物をするだけでも、いっぱいお札を持って行かなくてはならない。するとお金の価値が下がり、紙幣(しへい)が紙くずになる。そんな国は絶対に豊かにはなれません。

ジンバブエ

それから産業の隔たりです。これはアジアやアフリカなどでよくあります。私が来月出かけるエチオピアも、コーヒー豆をいっぱい作っているので有名な国です。またガーナはチョコレートの材料になるカカオ豆を作っています。紅茶や綿などばかりを作っている国も結構あります。そういう国は実は大変なんです。ほとんどの収入をコーヒー豆やカカオ豆や綿だけから得ていると、それらの値段が世界でドーンと下がってしまったときに、その国のもらえるお金もドーンと下がっちゃうからです。

日本のような豊かな国は、自動車もテレビも服もいろいろと作っているから、何かの値段が下がっても大きな影響(えいきょう)は受けない。でも、コーヒーやカカオや綿だけ作っているような国は、貧乏になってしまうのです。実際に1980年から20年の間に、コーヒーの値段がだんだん下がってきているのです。こういう国が豊かになれない理由は、世界の価格変化の影響をそのまま受けてしまうからということがあります。

優秀な人が活躍できない国

今度は、社会の話です。貧しい国では優秀な人が活用されにくいということがあります。どの国にも、本当に優秀だなと思える人はたくさんいます。でも、大学へ行けない、偉(えら)くなれないということがあるのです。それにはいろいろな差別があるからです。たとえば、民族が違うとか、あるいは非常に出身階級が低いとか、また宗教の問題などでも差別されます。本当はこういう優秀な人たちがのびのびとやれれば、国が豊かになると思っていても、そういうチャンスが与えられないのです。

逆に、親がすごく偉い人だからとか、特別なグループに属しているからといっただけの理由で、国を支配している人がたくさんいます。本当に優秀な人がいても活躍できない国は、やっぱり豊かにはなれません。

日本は、何かの仕事につこうとした場合、特に邪魔(じゃま)をされることはないでしょう。能力さえあれば、わりと自由に仕事が選べる社会であると思うのですが、世界にはそれができない国があるということです。

それから、社会の不平等が大きいことです。いろいろな国があります。貧しい国でも、ものすごい金持ちっているんですよ。宮殿のような家に住んでいます。その人たちが国の土地をほとんど持っていて、農業などをやっています。この国もなかなか豊かになれないのです。

たとえば、私にそういう大きな家があって、ものすごい土地を持っていたとすると、もう満足しちゃうんですよ。このくらいお金もうけができれば、よい生活もできるから、この国の発展など考えない。今の自分の立場が守られて、後は子どもにこの土地を譲(ゆず)ればいいと満足しちゃう。その土地で貧しい農民を何百人と働かせているのですが、彼ら農民は夢も希望も持てない。こういう国が南アジアや南アメリカにはあるのですよ。

四大文明の影響を受けなかった国

次は、ちょっと難しい話ですが、ゆっくり話しますので聞いてください。歴史の話です。たまに私はつくづく感じるのですが、どうして国が貧乏なのかということは、1000年前、2000年前に原因がさかのぼるのではないでしょうか。特にアフリカを見ていると、やっぱり歴史の違いは大きいのではないかと思います。

 四大文明

ずっと昔、3000年以上前にさかのぼるのですが、世界に四大文明という優れた文明がありました。この写真を見てください。中国のあたり、この赤いところですが、ここに黄河文明がありました。インドにはインダス文明、中東にはメソポタミア文明、それからエジプト文明です。昔このあたりはもっとも豊かなところだったのですね。こういった3000年以上前の文明に、我々の社会がどれだけ接してきたかということが、現在の国の豊かさに影響している部分があるのではと考えています。

アフリカには大きなサハラ砂漠があって、アフリカの北と南を移動することが非常に難しいです。アフリカのこの大きな砂漠が邪魔して、南には文明の影響が伝わらなかったのですね。

ヨーロッパやアジアは、四つの文明の直接的影響を受ける場所にあったのです。非常に良いところにあった。古代文明の遺産、たとえば、文字の書き方、数の数え方、あるいは社会の作り方といったものが、ヨーロッパやアジアの国々へは、時間はかかったけれども伝わっていったのですね。

しかし、アフリカ(砂漠の南側のアフリカ)は残念ながら文字がほとんどありませんでした。1000年、2000年、3000年と、ずっと文字が無かったのです。だから、人にものを伝えることができなかったのです。文字が無いと言葉でしゃべるしかないから、誰かに伝言を頼んで、その人がまた他の人に伝えてというふうに、言葉で伝えていくしかないです。それではあまり遠くまでは言いたいことが伝わらないですよね。また、言っている途中で間違えたりするかもしれない。そして後世に知恵とか記録を残せない。「今年こういうことがあったから、これからも気をつけてね」なんて、子や孫よりもっと先の人に伝えたいと思っても、文字が無いと記録として伝えることができないのです。だから、いろいろなルールだとか制度というものが作られにくくなってしまう。

社会のルールが変われば、法律として、みんなに広めて守らせるということもできるのだけれども、文字というものが無かったために、なかなかそういった機会もなかったです。そのためにアフリカの国は、1000年、2000年、3000年という長い間、王国のようなものはあったのですけれども、小さくて強くなれなかったのです。それがアフリカのかわいそうなところです。

今から300年くらい前に、ヨーロッパ人がアフリカへやって来て、いろいろ戦いがあったのですけれども、アフリカの国は小さかったからヨーロッパに負けてしまいます。そして自分たちの今まで持っていた文化も壊されてしまいます。文化が壊された状況が今まで続いてしまっていています。だから、ちゃんとした強い国が出来ていないのです。

日本は中国から文字が伝わった

では、アジアはどうだったのだろう。日本はどうだったのだろう。日本という国は幸運だったと思うのです。それは隣に中国があったからです。中国は、3000年、4000年という歴史を持つ素晴らしい文明国です。みなさんはひらがなとかカタカナというカナ文字を書いているでしょ。これは日本の文字ですけれども、漢字からできていることは知っているでしょう。私たちは中国の真似(まね)をすることによって、文字ももらうことができました。書くということで、離れた人にも伝えることができたし、次の世代に記録を残すことも、社会のルールを法律という形で残すこともできたのです。日本は文字を持っていたのです。

ベトナムもタイも昔から文字を持ってました。特に中国、あるいはインドの文明から文字をもらうことができました。それがあるから、アジアの国は大きくて強いのです。私たちの近隣の国は、アフリカと同じように300年前にヨーロッパに攻められて、戦争には負けたのですが、元々の国が強く、ちゃんとしていたので、自分たちの国や文化は、それほど壊(こわ)れることはなかったのです。1000年、2000年と時間をかけて造ってきた歴史がしっかりしていたのです。(後編に続く)

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