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パレスチナ問題と日本

パレスチナ問題と日本

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 私は開発援助コンサルタントの中では、中東で仕事をした機会が比較的多いほうだと思います。特にヨルダンには2年間滞在し、アラブとイスラエルとの間の緊張関係を間近に見ることができました。また、中東に行く以前には東欧でも仕事をしていたことがあり、ここでは別の角度からユダヤ人という人々を見ていました。二つの地域での見たことを踏まえ、日本はパレスチナ問題で何ができるのだろうと、素人なりに考えたことがありました。

ヨルダンのパレスチナ人

10年前にヨルダンにいたとき、パレスチナ人に多く会いました。パレスチナ人とは旧パレスチナ(現在のイスラエル)に生まれ育った人々、あるいはその子孫を指します。ヨルダンはもともとベドウィンと呼ばれる砂漠の民が住んでいた国ですが、1960年代の中東戦争以来、大量のパレスチナ人が移り込んできて、今では人口の半分以上がパレスチナ人と言われています。特に、首都アンマンなど都市部ではパレスチナ人比率が高いようです。移民だからといってパレスチナ人が特に差別されている様子はなく、現王妃のラニアさんも実はパレスチナ人です。べドウィンもパレスチナ人も顔では判別できず、本人がパレスチナ人であると言わないかぎり、我々にはわかりません。

パレスチナ人が子だくさんの理由

パレスチナ人は東南アジアの華僑に近いところがあり、とても勤勉で商才があります。自国を追われてきた人々なので、もともと土地も資産もなく、自力で頑張るしかなかったのでしょう。企業家、商店主、技術者、官僚、教員など、パレスチナ人が多かったです。私も多くのパレスチナ人と知り合いになり、自宅に食事に招かれたりすることがたびたびありました。その際にいつも驚くのは子供の数が多いということでした。子供が4~5人というのは少ない方で、10人以上いる家庭も珍しくありません。私の知り合いは中流以上の生活をしている家庭ばかりだったので、皆さん貧困層ではありません。しかし、子供が10人もいるとさすがに生活は大変だと思います。ある大学教員のご自宅を訪問した際に、「パレスチナ人はなぜそんなに子供が多いのか?」とストレートに尋ねたことがあります。

この教員から返ってきた答えにはちょっと驚きました。彼によると「いずれ兵士にさせてイスラエル人をパレスチナから追い出すため」というのが、子だくさんの理由だそうです。普段は温和な大学教員なのですが、この時は目が真剣で、とても冗談を言っている雰囲気ではありませんでした。彼の家族はパレスチナでは結構豊かな農地を所有していたらしく、イスラエルに奪われた土地を取り戻すことを固く決意しているようでした。きっと彼は自分の子供に、パレスチナでイスラエルに奪われた土地のことを日々語っているはずです。パレスチナの土地からイスラエル人を追い出すという願いは、子子孫孫と受け継がれてゆくのではないかと思われました。

中東でのユダヤ人のイメージ

昨年、サウジアラビアに二回ほど出張しましたが、アラビア語通訳を兼ねてヨルダン人のコンサルタントに同行してもらいました。中堅の会計監査法人の社長をしている人だったのですが、日本人と仕事をすることに関心があったようで、通訳としての同行を申し出てくれました。この社長さんもパレスチナ人で、サウジアラビアで一緒にいるときに、イスラエル人あるいはユダヤ人に対する恨みをいろいろ聞かされました。彼によると、CNNとかBBCといった世界の主要メディアはすべてユダヤ人が牛耳っているのだそうです。だから報道がイスラエル寄りに偏向しているだそうです。私はさすがに日本のメディアは違うだろうと反論しましたが、「日本だって絶対そうだ」と力説していたくらいです。

中東にいると、イスラエル人ないしユダヤ人とは、横暴で剛腕で、大きな力をもつ権力者というイメージです。米国の政界にも強い影響力があるようで、イスラエルは、米国の被援助国の中でも常に上位にいるはずです。通常は「援助」してカウントされない軍事援助まで含めると、最大の被援助国かもしれません。

東欧でのユダヤ人

しかし、こうしたユダヤ人のイメージは、ヨーロッパ、とくに東欧だとずいぶん違います。ポーランドで仕事をしたことがあるのですが、ここではユダヤ人とは、弱く悲惨な過去を持つ孤立した人々という感じです。ご承知のとおりポーランド南部にはアウシュビッツというユダヤ人強制収容所がありました。アウシュビッツとはドイツ語表記の地名で、ポーランド語ではオシェンチムと呼ばれる地方都市です。大きな国営化学工場がある企業城下町です(この国営企業が今どうなっているか不明ですが)。アウシュビッツというと当然ながらナチスドイツが責められるべき悲劇なのですが、実はポーランド人もユダヤ人狩りに協力した過去があります。だから、この問題にはポーランド人も少し後ろめたく思っているようです。当時、ユダヤ人排斥に積極的に加担したポーランド人が少なからずいたのでしょう。今でも、ポーランド国内各地にユダヤ人が住み着いていますが、宗教上の違いのせいか、あまり現地になじんでおらず、孤立しているように見えました。少なくとも、現地で好かれている感じはしませんでした。

あんなに弱く悲惨でかわいそうなユダヤ人が、中東にいったとたん、剛腕で強権で横暴な権力者に様変わりしてしまいます。ギャップが大きすぎます。もしかしたら、ヨーロッパで受けた惨めな扱いを、中東でパレスチナ人相手に、立場をかえて繰り返してしまっているのかもしれません。子供の時に親に虐待された過去を持つひとは、自分が親になったら子供に同じことをしてしまう傾向があると聞いたことがあります。ユダヤ人の行動も同じようなものなのでしょうか。

中東和平と日本の役割?

私はイスラエルには入国したことがなく、イスラエル人に知り合いはいません。ただイスラエル人のバックパッカーはあちこちで見かけますし、日本にも多くのイスラエルの若者が来ているようです。東京都内の路上でアクセサリーを売っている外国人の多くがイスラエル人だと聞いたことがあります。彼等にとって日本は比較的親しみがある国なのでしょう。

もちろん、中東を含むアラブ諸国も日本の大切な友人です。欧米に反感をもつアラブ諸国は、一般的に親日がムード強いです。だから、日本はイスラエルとアラブの双方から好意的にみられているだと思います。

したがって、中東和平に貢献するには、日本はとても良いポジションなのではないかと考えたことがあります。中東和平はクリントン元大統領をはじめ、欧米の政治家が幾度となく挑戦してきました。しかし、そのたびに失敗してきたように見えます。ここで日本が出ていったらどうなのだろうなどとかんがえました。

しかし、2年間のヨルダン滞在を経て、中東問題はとても日本が安易に手を出せることではないと思いました。そもそも2000年前まで歴史を遡るような問題ですし、とても根深いです。ユダヤ人もパレスチナ人も双方が受け入れられるような解決策などとても思いつきません。幸い、ユダヤ人もパレスチナ人も日本に仲介を求めている様子はありません。日本が外交音痴であることは周知の事実です。この問題に関しては、「君子危うきに近づかず」と知らんぷりするのが日本にとって一番良いのではないかと思ってしまいました。

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