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中国はアフリカ開発に貢献するのか?

中国はアフリカ開発に貢献するのか?

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私は、今はエチオピアで仕事をしていますが、首都のアジスアベバで中国人がとても増えています。出張にゆくたびに、倍増しているような気がします。エチオピアだけでなく、アフリカ大陸の各地で中国人がどんどん増えているという話を耳にします。中国の習主席も2013年3月にアフリカ諸国を歴訪し、アフリカ大陸に中国が「核心的利益」を有すると表明しました。アフリカにとって中国とはどういった存在なのでしょう。中国の登場はアフリカを大きくかえることになるのでしょうか。アフリカにおける中国の役割について、私にもよくわからないことばかりですが、とりあえず今の考えをまとめてみました。 

中国のアフリカ援助の実態

中国がアフリカでどのくらい援助・をしているかについて、実はよくわかっていません。途上国に対する援助はパリにあるOECD(経済協力開発機構)のDAC(Development Assistance Committee)が情報を取り纏めているのですが、そもそも中国はOECDのメンバーではないので報告義務が無いのです。国際的に「援助」として認められるためには、いろいろな決まりがあります。軍事面の支援が「援助」と見なされないことはもちろんですが、高い金利の借款も「援助」とはみなされません。さらに、国会議事堂の建設など貧困削減とは直接に結び付かない事業への支援も、「援助」とはみなされない傾向があります。しかし、OECD DACの縛りのない中国は、いわばフリーハンドを持っており、いろいろなことをやっています。

中国のエチオピアで目立った事業はまず道路建設です。首都のアジスアベバの主要幹線を対象に大掛かりな拡張工事が続けられています。また、地方の主要都市間の幹線道路も中国企業によって整備されつつあります。おそらく、中国の政府系銀行から多額の融資を受けて、建設工事を行っているものと思われます。施工業者はいつも中国企業なので、中国の支援事業だとすぐわかります。中国からはエンジニアだけでなく、パワーシャベルといった重機の運転手までも多く送り込まれています。よくこんな田舎までと思うような遠隔地でも、道路建設に従事している中国人を見かけます。道路整備が中国の支援事業であることを隠しておらず、むしろ誇示しています。道路に掲げる地名表記の掲示板(「高速道路入口へは左折」・・の類)が堂々と英語と中国語で併記してあります。そこまでやるか?と思います。

次に目立つのは通信事業です。携帯電話やインターネット網の整備は中国企業が中心となって進めています。通信はエチオピアの国営企業が独占的に管理しているのですが、中国企業から技術面、経済面の支援を受けているものと思われます。我々もエチオピアでインターネットを使うときは、中国製のモデムスティックを使っています。

また、これはエチオピア政府への支援ではないのですが、アジスアベバにあるアフリカ連合(African Union)の本部ビルも中国の支援で2012年に新築されました。20階建ての立派なビルで、総工費の2億ドル(約200億円)が中国の援助とのことです。

援助以外にも中国の国営企業、民間企業による投資も目立っています。首都から車で1時間ほど離れた町に広大な工業団地がありますが、中国語で「東亜工業団地」の大きく書かれています。広い土地がきれいに整備され、大規模な貸工場が林立しています。まだ入居企業は少ないようですが、家具、建築資材、セメントなどへの中国企業の投資案件をちらほら見かけます。ほかにも、中華レストランも多くなってきました。アジスアベバでは数か月ごとに一件くらいの頻度で新しい中華レストランが出来ているような気がします。

地元の人々の見方

こうした中国の大攻勢に対するエチオピア人の反応は微妙なものがあります。ただ、中国の進出が目立ってきたのは5年ほど前からなので、まだどう反応すればいいか良くわかっていないという感じです。エチオピアにはインド人も多く居住しているのですが、中国人と違って、インド人の移住は数十年前からのことであり、今では現地の風景になじんでいます。一方、中国人はまだ現地になじんでおらず、現地社会に溶け込んでいる感じではありません。中国人だけでミニ社会をつくって、まとまって暮らしています。中華レストランに行っても、お客はほとんどが中国人(+日本人)で、地元の人を見かけることは稀です。

中国のアフリカ援助の効果

中国の援助や投資がアフリカの開発にどういった効果があるのかについても、まだ結論を出すまでの材料がなく、見解もまとまっていないことと思います。アジスアベバ大学経済学部に懇意にしている先生がいるのですが、彼にこの件で意見を求めても明確な回答はなかったです。政府も、中国は資金と技術を持ってきてくれるのだから、断る理由がないというスタンスでしょう。私は中国の進出はアフリカにとって、短期的にはポジティブな開発効果があると考えています。しかし、中国に頼っているばかりではこの開発効果は持続しないとも思います。長期的に開発効果を持続させるためには、アフリカ政府がやらなければならないことは大きいと思います。

道路や通信網の整備

中国が道路や通信インフラを整備したことで、生活が便利になっていることは確かです。エチオピアのケースを見ただけでも、これは明らかです。近年、アジスアベバでの車両数の増大は著しく、朝夕は交通渋滞を引き起こしていました。市内の幹線道路を拡張したり、ロータリーを整備したことで、市内の移動が円滑になりました。それに、中国による道路整備のおかげで、地方都市への移動がずいぶん楽になりました。現在、首都と隣国ジプチの港湾をつなぐ道路が中国の支援で高速道路化されつつあるのですが、これが開通したら、輸出入業者にとっては利便性が大幅に高まることと思われます。また、国内の携帯電話網やインターネット網の拡張や整備も急速に進んでいるようです。エチオピアで流している中国の携帯電話会社のTVコマーシャルをみると、携帯電話があってどんなに生活が便利になったか、農村部の青年が笑顔で語っています。

意識変革

直接的な効果だけでなく、エチオピア人の意識変革を促す効果もあるのではないかと思います。今まで、エチオピアにとって(そしておそらく多くのアフリカ諸国にとっても)、事業のパートナーはいつもヨーロッパ諸国でした。植民地時代の旧宗主国の企業が、アフリカにやってきて、貿易や投資事業を展開する時代が続いていました。アフリカ人にとって資金と技術に優るヨーロッパの存在はとても大きく、常に劣等感を持ち接してきたようです。アフリカ人の抱く白人コンプレックスは根深いものがあるように思えます。しかし、中国人に対してはこうしたコンプレックスは感じていないようです。上に見ている感じも、下に見ている感じもないです。同じ目線で接しているように見えます。白人でない中国人がアフリカまでやってきて、インフラ整備を進めたり、事業を起こしたりするのは、アフリカ人にとっては新鮮な体験ではないでしょうか。

腐敗政権の温存

一方、中国のアフリカ援助に対して批判も寄せられています。その一つは、現地国の腐敗や汚職を助長してしまっているというものです。日本も含むOECD諸国は、途上国に援助をする際に、相手国政府 の統治構造をチェックすることになっています。政府が汚職や腐敗にまみれていたら、せっかくの援助資金が不正な用途に使われてしまう危惧があります。だから、そうした国に対しては、人道目的のものを除いて、援助は行わないという約束があります。しかし、前述のように中国はOECDのメンバーではないので、こうした約束にとらわれる必要がありません。政府が腐敗していて国際社会から非難されているような国にも、積極的に援助をすることができます。そのため、結果的に中国の援助は当該国の腐敗した政権を資金的に支えてしまうことになります。

もちろん、こうした批判はアフリカに対する中国の援助すべてに当てはまるわけではありません。OECD諸国が援助している「まっとうな」国々にも中国が援助するケースが多いからです。しかし、一部の腐敗した政権に対しても中国が堂々と多額の援助を行い、こうした政権を温存することに繋がってしまっていることは事実です。

所得格差拡大

第二の批判は所得格差の拡大です。アフリカ諸国のような最貧国に対しては、OECD諸国は貧困削減を直接の目的とする援助を実施することが多いです。例えば、小規模灌漑、小規模浄水場、小学校、農村電化、公衆衛生教育、農村道路などへの援助事業です。高度経済成長を狙うような大規模な経済インフラの建設は、今は積極的にはおこなっていません。例えば、高速道路、港湾、空港、大規模発電所といった経済インフラです。しかし中国の援助はむしろ後者のような大規模な経済インフラの整備を目的とする事業が多いです。

実は、日本も1980年代から東南アジア諸国でこうした大規模インフラ事業を実施してきました。現在では、一段落ついた感じがありますが、ミャンマーといった新興国ではこれからもインフラ事業への支援が続くことと思います。東南アジア諸国は、アフリカ諸国と異なり、最貧国ではありません。国民全般の教育水準は高く、商工業の伝統もあります。だから大規模な経済インフラを整備すれば、それが、海外からの製造業の投資を誘発し、国内で雇用を生むことに繋がりました。また、地元の商工業も外国企業の下請けになったり、サービスを提供するといった形で、活性化してきました。

では、アフリカで中国が大規模経済インフラを整備することで、東南アジアで起きたような変化が生まれるのでしょうか。私は疑問だと思います。外国企業が労働者を雇用しようにも、現地の人々は教育水準が低く活用できません。そもそも人口密度が低く、大量の労働者が集まりません。アジアと比べると地元の商工業はあまりにも弱く小さいです。とても外資企業の下請けになどなれません。こうした状況だと、予想されるのは、経済成長による所得格差の拡大です。一部のエリート層は外国企業と手を結びますます豊かになります。天然資源を産出する国なら富豪が誕生してもおかしくありません。こうしたエリート層は子弟を欧米にでも留学させることは簡単でしょうから、子弟が帰国すれば、外資にとってさらに良いパートナーになります。

一方、その他の人々にとって経済発展の恩恵を受ける機会は限られます。特に地方の農村部の人々の場合、都市部での経済発展など、どこ吹く風とった感じでしょう。10年たっても20年たっても同じ生活を続けてゆくことでしょう。子供の教育にも関心は低く、地元の小学校に2年間程度通わせる程度だと思います。子供が大きくなって都市に出稼ぎにいっても、ちゃんとした仕事を手にいれられる機会は手にいれられません。そもそも英語ができないので、外国人相手の企業などには相手にされません。不満がどんどんたまり、場合によっては、犯罪に手を染める者が出てこないともかぎりません。

アフリカで一番治安の悪い国はナイジェリアと南アフリカ共和国だと言われています。ナイジェリアは産油国であり西アフリカでは一番経済成長している国です。南アフリカ共和国も資源国ですし、サッカーのワールドカップを主催できるくらい豊かな国です。おそらく両国とも、経済成長しても、一部の階層しか豊かさを手にいれることができないのでしょう。だからそれが貧困層の不満を募らせ、治安の悪化につながっていることと思います。

アフリカ諸国の政府がやるべきこと

中国のアフリカ支援により、国の一部は高度経済成長を実現すると思います。実際に成長しています。しかし、それが国民全体に広く普及することはあまり見込めません。貧困層を対象に初等教育や公衆衛生といった社会サービスを充実させないことには、いつまでたっても成長の果実は一部に独占されたままということになるでしょう。これはアフリカ諸国の政府が正面から取り組まなければならない問題だと思います。ただ、どれだけの政府がこうした問題意識を持っているかは疑問です。私は、中国の援助をきっかけとして、アフリカ諸国がこれからどんどん豊かな国になってゆくとは、とても思えないのです。

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