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政府開発援助と国益

政府開発援助と国益

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日本の政府開発援助の基本方針を定めた文書に「政府開発援助大綱(通称ODA大綱)」というものがあります。2003年8月に作られたのが最後なので、もう10年前になります。ご関心のある方は外務省のサイトでチェックしてみてください。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/taikou/taiko_030829.html

このODA大綱を検討しているときに、日本の国益とODAとの関係が議論になりました。国益といっても「国際社会における日本の権益・・・」といった抽象的な話ではなくて、日本企業の利益という意味です。日本のODAは国民の税金を使っているのだから、日本企業の直接・間接的に利益につながるべきであるという主張です。例えば途上国政府に機材を納入するときは、日本製の製品を購入するとか、途上国がインフラ建設をする際は日本の業者が選ばれるべきといった考えです。国益(日本企業益)を主張するために、経団連から政府に意見書が提出されたりしました。

この国益の話が阿部政権になって再び顔をだしてくるようになりました。皆さんご存知のように、安倍政権は、日本経済の再生に向け、①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略という3つの政策を、「3本の矢」として同時展開していくこととしています。この成長戦略には日本企業の海外でのビジネス展開も含まれています。各国の日本大使館は当該国に進出した(する)日本企業のサポートに全力で取り組むことが求められているようです。日本政府が実施するODAも、日本企業の進出を何らかの形でサポートすることが意識されています。

10年前にODAと国益をめぐる議論があった時、私はどちらかと言えば好意的に見ていました。「援助は高貴な活動なのだから、企業の利益など下世話な話をするのはおかしい・・」なんて考えませんでした。むしろ、援助の効果を持続的に引き出すためには、日本企業が現地でビジネス展開するのが望ましいと思っていました。例えば、日本の援助で育成された人材が日本企業で雇用されたり、日本の援助で整備された道路や港を使って日本企業が輸出入をすれば、援助の成果の有効活用につながると考えていました。実際、そんな場面をタイやベトナムで目にしてきました。援助だけで国が豊かになることはない。民間のビジネスが活性化して、国は豊かになるのであり、日本企業も大きな役割を担うはずだと思っていました。

こういう立場なので、安陪政権下で再びODAと国益の話が出てくるのは喜ぶべき・・・なのですが、なんか最近はすっきりしません。日本のギラギラした国益が前面にでてきて、どっか違和感があります。その理由を考えたのですが、おそらく、最近の国益論には、「途上国経済の開発を促進するためには」という前提が見えないからだと思いました。日本経済の再生は前面にでてくるのですが、それが途上国の開発にどうつながるのかという議論が出てきません。例えば、途上国の鉱物資源を日本が確保するために、日本企業の現地での資源開発を日本政府がバックアップしようという主張があります。でも、こうした資源開発が、現地の経済開発にどうつながるのか、正面から議論されていないように見えます。資源開発をしても、現地で一部の利権者を潤すだけで、地域の人々の収入を増加することにはつながらないのではないかと思ってしまいます。あくまで途上国の開発への貢献が期待されるから、日本のODAが日本企業の利益につながることに賛成であったわけです。その前提が見えないのなら、反対とは言いませんが、なんか他人事のように感じてしまいます。もちろん、私企業が利益を追求するのは当然のことなので、どっかで「見えざる手」が働いて、いずれは途上国の人々の収入増につながると信じていればよいのでしょうか。

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