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さかさまのカクテルグラス

さかさまのカクテルグラス

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タンザニアでの2か月の滞在もやっと終わりをむかえました。今回の滞在は、この国の農産物加工業を振興するにはどうしたら良いかについて検討するために、情報を収集するのが仕事でした。そのためにタンザニアの大小さまざまな企業を回って経営状況などを調べました。調べている過程でいろいろアフリカっぽい問題が見えてきました。それは、さかさまのカクテルグラスといわれる社会構造です。

インフォーマルセクターという言葉をご存知でしょうか。正規に営業登録をしていない零細企業一般をさします。営業登録していないので、無許可の操業ですし、当然税金も払っていません。いわばモグリの商売です。しかし、このモグリの商売が、アフリカでは馬鹿にならないくらい大きいのです。おそらく企業登録を進めるような政府機関が弱体で、とても手が回らないのでしょう。交通網も整備されていないので、全国に無数にある零細企業を一つ一つ調査するなど、最初からあきらめているのかもしれません。タンザニアの人口は5,000万人弱ですが、約300万社の零細企業が存在すると推測されています。規模はとても小さいので一社あたりの従業員はせいぜい5名までです。平均で3名とすると、インフォーマルセクターの従事者数は900万人ということになります。

今回の調査ではこうしたインフォ―マル部門の零細企業は対象ではありませんでした。あくまで正規に登録された企業のみが対象でした。インフォーマル部門の企業に対して、正規に登録されたフォーマル部門とはどのくらいの規模があるのでしょうか。
2011年にこの国の産業貿易省が実施した企業サーベイがあります。各企業から集めたのは2009年のデータなのですが、現時点ではこれが最新の企業サーベイです。従業員10名以上の規模の正規登録された企業のみが対象です。これによると、工業部門(製造業+電気、ガスなど)の企業数は733社です。そのうち農産物加工業(食品と飲料品)を生産する企業は251社のみです。ちょっと驚くほどの少なさです。こんなに少ないはずはないと思い、業界団体や政府機関を訪問した際に、この数字の確認を求めましたが、そんなもんだそうです。ちなみに人口が5,000万人強のタイでは、大企業だけでも5,000社くらいあります。300万社のインフォーマル部門の零細企業にくらべ、フォーマル部門の企業はとても数が少ないです。
従業員数はどうかいうと、250社の農産物加工企業の総雇用は4万人程度です。しかも驚くのは、その7割が大企業に雇用されていることです。従業員500人以上の規模の大企業は農産物加工企業の中で18社しかないのですが、そこだけで3万人が働いています。のこりの1万人がのこりの232の社の中小企業で雇用されていることになります。雇用だけでなく、生産面でも大企業のシェアは大きく、付加価値額でも従業員500人以上の規模の大企業のシェアが5割になっています。フォーマル部門では少数の大企業の存在感がとても大きいです。その反面、この国の中小企業は何と影が薄いことでしょう。
膨大な数のインフォーマルセクターの零細企業と、存在感のある大企業と、影が薄い中小企業の三つが、この国の企業構造になっています。その状況を、さかさまのカクテルグラスと表現するひとがいます。カクテルグラスの底の部分が大企業、カップ部分が零細企業、両者をつなぐ軸の部分が中小企業というわけです。うまく表現したものだと思いました。

さかさまのカクテルグラス

このカクテルグラス構造は、企業だけでなく、社会全体に当てはまるような気がします。たとえば我々が泊まるホテルもそんな感じです。ヒルトン、シェラトンといった五つ星ホテルは威風堂々と存在感を示しています。しかしこれに続く中小規模のホテルがなかなかないのです。私たちの出張費で泊まれるホテルは中小規模くらいなので、なかなかホテル探しに苦労します。しかし、その下のレベルのミニホテルになると、膨大な数があります。ベッドにダニがいそうな簡易ホテルですが、町のあちこちにみられます。
人々の構成もそうかもしれません。大学卒のエリート、欧米の大学院で勉強してきたような超エリートは、町で大活躍しています。その一方、小・中学校しか通っていない、あるいは小学校すら中退したような低学歴の人々も膨大が数におよびます。その真ん中の高卒、職業学校卒くらいの人々が少ないようです。
このさかさまのカクテルグラス構造は、アフリカに根強い問題のように見えます。

 

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