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インドネシアの刑務所視察

インドネシアの刑務所視察

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長年ODA(政府開発援助)の仕事をしていますが、今日は初めての経験をしました。インドネシアのジャカルタ市内にある刑務所を訪問してきました。実は一年ほど前からインドネシアの法務省と相手に仕事をしています。法務省の中でも、刑務所を所轄している矯正局を対象に、年次計画をつくるお手伝いをしています。今日は、矯正局で3回目くらいの打ち合わせをすることになっていたのですが、先方から「よかったら刑務所を視察しない」というお誘いがあったのです。ちょっと躊躇しましたが、せっかくだからと、先方の好意にのって、同僚数名と視察してみることにしました。午前中は法務省矯正局で普通にミーティングをして、お昼に会議室でお弁当をいただき、食後に刑務所に向けて出発です。

 刑務所の場所はジャカルタ東部だということで、本当に近かったです。市内中心部から30分ほどでついてしまいました。周りは商業地や住宅です。地名はTIPINANGというところでした。拘置所と刑務所が一緒になっているところで、両者の真ん中に病院があります。病院は一般向けと囚人向けと両方のサービスをしているのだそうです。刑務所といっても、ここは薬物犯罪者専門の場所でした。薬物患者ではなく、販売や密輸をしていて捕まったひとたちです。囚人はほとんどインドネシア人ですが、中国人とナイジェリア人もいるとのことでした。

矯正局の職員の案内で刑務所の中に入りました。制服を着た刑務官に身分証を預け、ロッカーのカギをもらいます。私物は全部ロッカーに預ける必要がありました。カメラを持参していたのですが、たぶん撮影はだめだろうと思ってロッカーにしまいました。すると、刑務官のほうから「カメラは一つまで持ち込み可ですよ」と言われました。そこで訪問者を代表して私のカメラを持参することになりました。その後は、空港にあるような金属探知機をくぐって、やっと刑務所の中に入ります。入る直前に刑務官から手の甲にスタンプをされます。昔、ディズニーランドで、いったん外に出るとき手のヒラに透明のスタンプをされましたが(今でも?)、その時のことを思い出しました。スタンプの意味はあとでわかります。

刑務所とは、厳重な鉄格子のようなもので囲まれているところを想像していたのですが、なんか貧弱な金網でかこってあるだけで、いくつかの扉をくぐったらもう「檻の中」でした。最初は入り口で待っていた幹部(所長さん?)に挨拶です。はじめは険しい顔をしていましたが、矯正局の方がいろいろ説明していたらやわらかい表情になってきました。所長さんの案内で施設の中に入ってゆきます。最初は広場にでました。サッカー場くらい広いところです。午後の3時くらいだったのですが、囚人が200人くらいたむろっていました。広場のはじにはステージがあり、10名ほどの囚人が演奏しています。所長さんのお話しでは、8月の独立記念日の行事に備えた練習だそうです。

広場でたむろっている囚人さんの中を普通に歩いて、建物に入ります。この建物は職業訓練の場になっていました。最初に訪れたのはパン工場です。20名ほどの囚人が熱いオーブンの前でパンを焼いていました。技術指導している女性職員がでてきて、いろいろ説明してもらいました。ここで焼いているパンはすべて市販しているそうです。直径8cmほどの丸いチョコチップいりパンが2000ルピア(約20円)でした。どうぞどうぞと勧められて一つ食べたのですが、ふわふわでものすごくおいしかったです。市内で売っているパンよりおいしかったです。私は自分でもパンを焼くので、なんとなくわかったのですが、これは念入りに手でこねて、丁寧に発酵させたパンだろうとおもいました。刑務官の一人に工場の中の写真をとってよいかと聞いたら、勘違いされて、みんなで記念写真をとることになりました。みんなでポーズをとってチーズです。囚人の一人にシャッターを押してもらいました。なんか変な感じです。

次は、建物の二階にいって、ロープと家具づくりの現場を見ました。ロープは、廃タイヤのようなものを手回しの器具にのせてほぐして作ります。何の用途のロープか全くわかりませんでしたが、15名ほどの囚人が一方向を向いて作業をしています。家具づくりは、あいにく作業は行われていませんでしたが、製品である机いくつかがおいてありました。二階には他にクリーニング作業場がありました。

次は厨房です。いかにもキッチンといったところに、ピンクのユニフォームを着た囚人が30名ほど働いていました。所長さんに、そのうちの一人を紹介してもらいました。料理長のような役割の模範囚です。マレーシア人だとのことです。まるまるして大柄の温和な人でした。中国料理が作れるというから、同僚が日本料理は作れるかと聞くと、それはできないそうです。模範囚さんに勧められて出来立てのエクレア(たぶん)を食べました。手が汚れるからとティッシュも配ってくれました。甘さ控えめでおいしかったです。模範囚さんと握手して、一階に戻ります。

階段の下には、刑務所で作った工芸品が展示してありました。ティッシュボックス、人形、帆船などが陳列されています。法務省の矯正局の入り口にもお店があって、同じようなものが展示されていました。

建物を出て、いったん広場に戻ります。今度は別の建物に入ります。そこは囚人と家族との面会場でした。教室の半分くらい巨大な水槽があり、3方向がガラスの壁で囲ってあります。ガラスの壁の前に、長テーブルがあって、囚人が20名ほど座っています。みんなテーブルの上の電話をつかって、水槽の外にいる知人や家族と一生懸命に話をしていました。水槽の外は一般社会というわけです。自分自身が今いるスペースは水槽の中、つまり囚人側で、塀の中です。そんな感じが面白かったです。

もう一度広場に戻って、所長さんにお別れすることになりました。なんでもここには3,000人が収容されているのだそうです。広場や建物にいる人はせいぜい300人程度だったので、あとの9割はどうしているのかと思いました。矯正局の職員によると、国内の刑務所はどこも収容能力の2~3倍の囚人を詰め込んでいるのだそうです。今日は居住スペースには入りませんでしたが、おそらくそこはすし詰め状態なのでしょう。

外に出る前に、刑務官が私の手をとって先ほどのスタンプをチェックです。そうですスタンプが押してあるとうことは、訪問客だという証だったのです。スタンプが無い人は外にでることができないルールです。ちゃんとスタンプをおしてもらってよかったです。

私は日本の刑務所は訪問したことが無いのですが、映画等でみるとかなり厳格なイメージです。作業中は私語を禁止され、所内の移動は一列で進むといったイメージです。だけど、ここの刑務所はかなり自由でルーズな感じでした。刑務所というより、普通の町工場を見てきた感じです。刑務官もあんまり厳しそうな雰囲気ではありません。訪問者向けに良いところだけを見せたのかもしれませんが、なんとなくアットホームな感じでした。万が一収容されることになっても、ここだったら1年間くらいいてもよいかなぁと思ってしまいました。

そんな面白い経験をした一日でした。いくつか写真です。

入り口(こちらは拘置所)           刑務所内の広場で記念写真

拘置所前  P1020577

パン工場(女性は技術指導員)        所内で作った工芸品

パン工場  工芸品

 

 

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