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修理しない文化

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援助実施機関での経験

ずいぶん昔のことですが、日本のODA(円借款)実施機関に出向していたことがあります。出向先は当該機関の研究所でした。ODAの実施機関の内部に入るせっかくの機会でしたので、いろいろ円借款の事情を学ぼうとおもいました。そこで、途上国の円借款事業実施機関(省庁や公社など)の事業実施能力を、担当職員がどう評価しているかについて、調べることにしました。各地域課職員や帰国中の海外事務所職員にインタビィーして、それぞれの国の事情を根掘り葉掘り聞きました。こちらは「内部」の人間なので、いろいろ正直に答えてもらいました。

ケニアでの円借款道路の補修

その時のインタビューで印象に残っているのは、当時ナイロビ事務所でケニアの円借款を担当していた職員からの苦言でした。彼は主に道路の借款を受け持っていたのですが、ケニア人は道路の補修ということを全くしないのだそうです。道路はこまめに補修をしないと、次第に劣化してゆきます。暑い地域ではアスファルトは柔らかくなり、大型車両などが頻繁に通行すると、平面が歪んできます。これを放置すると、歪みが亀裂したり、穴ができてきます。そのまま放置してゆくと、アスファルトがはがれて、しだいにデコボコ道になります。50kmくらいで走っていて、こうしたデコボコに突っ込むと、頭を車の天井に打ち付けるようなショックを受けます。これほど道路補修が重要なのに、ケニアの道路公社は全く補修に関心が無いのだそうです。道路がどんどん劣化するのを放置して、5年くらいたつと、もうどうしようもなくなります。そうなると今度は日本にリハビリプロジェクトをリクエストするのだそうです。担当者によると、リハビリプロジェクトというのは結構高額な事業になり、毎年毎年きちんと補修をする方が、トータルでよっぽど安く済むようです。なんという金もムダだろうとのことでした。もちろん、援助とはいっても借款なので、無駄に使うと相手国の借金がどんどん重なってきます。

エチオピアでの身近な事例

今はエチオピアにいますが、ここでも本当に修理ということをしません。道路のことは専門家でないのでわかりませんが、修理しないまま放置されているものの事例は身近に事欠かないです。例えば、今のプロジェクトオフィスのエレベーターの例があります。ここにはエレベータが二基あります。一つはずいぶんと昔から使われておらず、もう一つも5か月ほど前に壊れて、そのままです。ここは、決して低層の建物ではなく、日本の数え方だと12階だてです。だから、職員の毎日の不自由は目に余ります。体格の良い女性などは、大きなおしりを右に左に揺らしながら、ふーふー言いながら階段を上ってきます。アジスアベバは標高が高いので高地トレーニングになります。また、各階のトイレも壊れたままです。日本で言う「洋式」の水洗トイレですが、ちゃんと機能しているところは見たことありません。オフィスの机や椅子もガタガタで、慎重に座らないとヤバそうな椅子があっちこっちにあります。さらに、今実施しているプロジェクトでは、地方都市の財務局事務所にゆくことが多いのですが、事務所を訪ねると壊れたOA機材がいつも片隅に山積みになっています。コピー機やプリンターなどまだ使えそうなものでも、壊れるとそのまま放置されています。もっと身近な例だと、今、宿泊している首都のホテルでも、家具が壊れた家具が放置したままです。宿泊していた部屋の洗面台が壊れていて、あまりに不便なので、かつて自分で応急修理したことがあります。数か月後にチェックインして、たまたま同じ部屋にはいったら、私の応急修理がそのままになっていました。本当に修理ということをしない文化だと思います。こまめに修理をした方が長く使える場合でも、それをせずに使いつぶすといった感じです。

修理をしない理由

この修理をしない文化がとても不思議で、いったい何が理由なのか考えてみました。まずエレベータの件を踏まえ、エチオピア人はきっと我慢強いのだとおもいました。12階だてのビルでエレベータが故障していたら、さすがに文句を言う人が多く出てきそうなものなのに、こうした不満は一切聞きません。プロジェクトのエチオピア人スタッフに、エチオピア人の我慢強さについて見解を求めると、「いや我々は絶望する状況に慣れてしまっているのだ」という答えでした。上に文句を言っても何も変わらないことをわかっているから、皆何も言わないのだそうです。エチオピアは十数年前まで軍事政権下の圧政だったので、その影響が残っているのかもしれません。

なんか納得ゆく説明ですが、それだけではないような気がします。エレベータの修理は無理でも、トイレなどはたいして費用をかけずに直せそうです。そこで、次に考えたのは、生活環境の違いです。エチオピアの一般人の家庭にはおそらく水洗トイレはありません。プロジェクトの秘書の自宅のトイレも水洗ではないそうです。政府の建物であっても、地方だと、地面に穴があいているだけです。自宅の家具もおそらく壊れかけのものを長く使っていることと思います。自分自身の生活環境がこのように質素なので、少しくらい壊れた器具があっても、さほど不便とは思っていないのでしょうか。

また、信頼できる修理業者がいない、少ないという事情もありそうです。プロジェクトオフィスのコピー機が壊れた時に業者に連絡したら、出張修理を断られ、現物を持ってこいといわれたことがあります。日本のコンビニにあるような大型のコピー機なので、そう言われてびっくりしました。この時に思ったのは、おそらく修理サービスというものがあまり発達していないのではないかということでした。特に、地方都市になると、OA機材が壊れても、修理してくれるような技術者が地元にいるような感じが全くしません。壊れても放置するしかないのでしょう。また、業者の質も問題です。かつてオフィスにあるトイレのドアの修理を「業者」に依頼したことがありますが、日曜大工のような素人っぽい仕事で、あきれたことがあります。案の定、数日で元通りになってしまいました。

あと、やはり感じるのは、与える側(ドナー)の責任です。ケニアの道路のケースもそうですが、道路を補修をしなくて5年放置していても、いずれ日本がリハビリプロジェクトをやってくれるのです。相手国政府もそれをわかっているのです。なんでわざわざ毎年補修をする必要があるのでしょうか。それに、エチオピアの地方都市にOA機材を配って歩いているのは、世銀やUNなどドナーです。我々のプロジェクトだって各地にパソコンを配っています。OA機材が壊れても、いずれどこかのドナーが新品を供給してくれるのです。そもそもアフリカは貧しいのです。OA機材のような高価なものは、無理して業者を探して修理を手配しなくても、ただ待っていれば、いずれ新品を与えられるものなのです。だから修理業もニーズがないのでしょう。もし、このように他者依存的な態度があるとすれば、やっぱりドナー側にも原因はあると思います。

エチオピアの鉄道建設は大丈夫か?

今、エチオピアの首都アジスアベバでは鉄道建設の準備が進んでいます。おそらく中国の借款で建設されるもので、「中国中鉄」のエンジニアたちが、乗り込んできています。中国が作った道路は町のあちこちにありますが、鉄道建設は初めてです。エチオピアの修理しない文化と、中国の壊れやすい機材(偏見?)が結び付くと、どうなるのでしょうか。めでたく数年度に鉄道が開通しても、あまり乗りたくないような気がします。

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